激闘編-2
前方に心なしか肩を怒らせて歩く大きな背中。
背筋をしっかりとのばし、彼方のボールを凝視しながら歩いている。
中山さんはリカバリーショットをどのように行うか集中していた。
ボールに近づくとゆっくりとトラブルの原因となった幹を見上げている。
静かに吐き出した息が決断を教えていた。
無言のアドレスはピンを指している。
低く腰を下ろした独特のスイングから打ち出されたボールは目標に確実に飛んでいく。
グリーン捕らえた。
一寸水を含んだ低音が静けさの中で際立った。
2メートル手前下方にピンに向かうこと拒否するかのように止まった。
3人の声にならないため息が聞こえるようだった。
私は丘の向こう側のナナカマドに当たらぬ事だけを注意して、
9番アイアンでショット、乗っただけピンまで7・8メーター。
幹事長のおもわぬリカバリー攻勢に動じることなく武将堤は、
狙い定め矢を射るようにショットした。
ボールはピンの根本を確実に捕らえたように思われた。
しかし、駒丘独特の傾斜が拒み、大きく左にキック。
固い場所だったのかランの勢いが上方5メートルまで押し上げてしまった。
僅かな失望が武将を包んだ。
安定感のある後ろ姿がアドレスを仕始めた。
眼が不自由な彼のアプローチは辛い例が多い、
彼の心を過去のミスが覆っているのだろうか?
ダフリ?トップ?オーバー?ショート。
テークバック仕始めた彼には不安が無いのだろうか。
ハーフスイングでトップを終えゆっくりと下ろされたショットは的確な距離と方向を作り上げていた。
ボール位置は2メートルないように思われる。
私はゆっくりとパッティングをした。少しのフックだ、距離はあるがさほどのことはあるまい、
少し強い、ボールは僅かにはずれ左10cmに止まった。グリーンは重い、お先に。
武将も優しくパッティング、入ると思われたボールは下目5cm、OK。
バーディーチャンスの二人は前者二人のパッティングを参考にしただろうか?
中山、オーバースピンでカッツンと音がするように攻めてきた。僅かに左に、OK。
隻眼のプレーヤーは狙いを僅かに右に置きパッティング。
誰もが祝儀ポイントを覚悟したが、結果は2パットのパー。 全員4。
11番 PAR3 177ヤード ピンは右側中程。
上田 右下にオン、2パット。
中山 下目にオン、2パット。
堤 僅かにショート巧みな寄せでOKパー。
私 左にオン、下りの4メートル偶然に入りバーディー。
12番 PAR4 378ヤード。ピンは右、僅かなフォロー。
私、中山、堤ドライバーショットを終えて残り約130ヤード、
上田のドライバーショットはスライスして右OB方向へ、
樹に当たって辛うじてセーフ。しかし、樹の後方根元にボールがあった。
グリーン左手前のバンカー方面にしか狙いがとれない。
刻む予定が脱出劇だけにパンチが入った、
ボールは一番避けなければならないバンカーに入ってしまった。
片目だけのバンカーショットはソール出来ないだけに難しい。
バンカーショットはホームランして反対側のバンカーへ。
右のバンカーからはダフり気味の僅かなON。
競い合う仲間だけに彼のバンカーショットを見るのがつらい。
彼はミスを受け止めて、無理せず2パットの6。上田 6、他三人4。
13番 PAR4 376ヤード。打ち降ろし、ピンは奥。
堤は第一打、スプーンを使い残り150y。他の3人は残り90y。
私は右目3メートルにオン。中山、上田は下目2,5メートルにつける。
堤はショート気味のONだったが結果は4。中山 4。上田、私 3。
14番 PAR5 476ヤード。登りが続くホール、ピンは右奥。
中山第3打を左のバンカーから乗せるが長いパーパット、それを見事に決めて5、他三名5。
15番 PAR4 410ヤード。全員4。
16番 PAR3 239ヤード。中山、私 3。上田 4。堤は痛恨のOBで5。
17番 PAR4 410ヤード。中山、5他三名4。
18番 PAR5 536ヤード。
その頃から風がつきだした、後から考えると何かの前兆だったのだろうか。
私は何とか寄せてパーでしのいだ17番のグリーンを振り返っていた。
そこへ共に寄せワンを決めた堤さんが独り言のように話しかけてきた。
「降りてこないから自分もしっかりとゴルフをしてますよ。」
確かにそうである。彼は16番のOB 以外にはミスはないのだから。
この先、八柳氏ともライバルになる堤さんの日焼けした顔を見入った。
18番を無難にプレイして勝ちを得たいと思いながら、私はティグランドに向かった。
風が強くなってきている。
それを打ち払うようにゆっくりとセットアップをして、強いアゲインストの中ショットを放った。
ボールは軽いドローの放物線を描きながらフェアウェイに降りようとしていた。
強い風のせいだろうか警告だろうか、風に押されて右の山裾へ。
ウッドを我慢して3番アイアンで第2打を、残り130ヤード。
ピンは右中段よりやや上、第3打は右にややはずれオンならず。
上り、順目、フック。アプローチはカットして打つか?ランを大きくとるか?
カットして打つ事に決めた。
結果は寄り切らず。2メートルオーバー、セーブ出来ずボギー。
私、上田6。 堤、中山5。
中山 4,3,4,4,5,4,3,5,5,=37 私 4,2,4,3,5,4,3,4,6,=35。
堤 4,3,4,4,5,4,5,4,5,=36 上田 4,3,6,3,5,4,4,4,6,=39。
こうしてハーフが終わった。
インの茶店には先発の組がいた。何やら石田君のバーディの話で盛り上がっている。
私の顔を見るなり、小鼻を膨らましながら「どうだったんですか?」
代わりに堤さんが前半のスコアーを告げる。
「勝てない、強いですね!アウトは僕が勝ちますよ。」
彼の憎めない態度に弱いのか、つい笑ってしまった。
凋落はここから始まった。
1、2番を3パットと全てがちぐはぐになっていた。
反対にそれに乗じる様に堤、上田は確実にパーを重ね、7番が終わって。
私は5,6,3,5,6,4,3,=4オーバー通算3オーバー。
堤 4,5,3,5,6,4,3,=1オーバー通算4オーバー。
上田 4,5,3,3,6,5,3,=1オーバー通算4オーバー。
中山 4,6,4,5,5,5,3=4オーバー通算5オーバー。
誰がベスグロをとってもおかしくない。
ついに均衡を破る時がきた。風はアゲインスト。残り2ホール。
8番 PAR4 420ヤード。
風はアゲインスト、堤はティグランドに立っている。
気合いが入ってきたのか、彼の顔が紅潮してきた。
長尺ドライバーがまるで長刀の様に見えてきた。
長刀を下段から上段へ引き上げ、白い個体を打ち抜いた。残り220ド真ん中。
私は、ピンがどこにあるかも確認せずにその白い点をターゲットにスィングした。
無情にも残り210右山裾ラフ。
上田、中山も起死回生のバーディーを念じてスィング。
上田は左山頂残り200、中山210。
ピンは右中。堤ウッドで左上にオン、中島左ややショート。
ウッドでは大きい、2か3アイアンか?迷った。
“アゲインストでは急ぎ打ちはダメだ”ゆっくり、ゆったり!”を口の中で唱えショットした。
ボールはピンに向かっていく、想定より風が強かった。
吹き下ろしの風に叩かれショート、右手前バンカー。
上田5番ぐらいだろうか、ピンをめがけて振ったが力が入ったのだろう、ダフッた、30Y進んだろうか。
ミスがミスを呼び込むのだろうか、3打目も乗らず。4オン3パット、7。
中山寄せたがボギー。
私はバンカーから、1メートルピン右、のぼりを残す。
堤4メートル下りスライスをさわる様にパット、「カラン」バーディー。
私ははずして5。
並ばれるどころか、抜かれてしまった。
堤3計3、私5計4、中島5計6、上田7計7。中山、上田戦線離脱。
9番 PAR4 375ヤード
上田2オン2パット4、中山3オン2パット5。
堤のドライバーショットはフェアウェイ残り170ヤード。
私右ラフ残り160ヤード。
堤は冷静である。奥からの下りのパットを嫌って、5番アイアンで下目狙い。
僅かにショート。
私はピンをデットに狙った。距離は良かったが右にはずした。
堤はスピンを信じ強気のアプローチで攻めてきた。
落ち所が悪かったのか1ピン上につける。
私は前日のアプローチ連習のご褒美なのだろうか、30センチ右手前に置く事が出来た。
堤は8番を思わせる柔らかいパッティング!惜しくもはずれてOK ボギー。
30センチを強めにパッティング、パー。
私76、堤76、上田79、中山79。
振り返ると9番のフラッグが折れそうに揺れている。
スコアーは風に影響される。しかし・・・。
その年、堤はクラブチャンピオンに輝いた。 おわり。
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激闘編-1